言語とは何かというとき、形式論と意味論という二つのアプローチがあります。チョムスキーの生成文法は100%形式論です。それに基づいたALGOL系の言語としてCも形式論が押し通していますが、意味論を無視することはできません。
K&Rでは、Appendix A のA5に短く書かれているのが左辺値(LValue)の問題です。Cでは、代入は演算子として処理されます。そこから、x=y=z=0;のような文も書けることになります。しかし、代入演算子の左辺には何かの実体を指すものが来なくては困りますね。
たとえば、(x+3)=(y+5);なんてありえないでしょ。*p++=*q++;というときには、ポインタが指すものはどこかの実体ですので、この式は正しいのです。しかし、x++=y++;とは書けません。x++はx+1に他ならないからです。
ということは、++演算子や--演算子の作用する対象もLValueでなければならないとも言えます。x[n]++;はオーケーなのです。
まとめていうと、ある種の処理の対象はどこかの実体を指していなければならないということです。それを左辺値(LValue)と呼んでいます。まあ、話はこれだけです。なので、K&Rでも簡単に書いておしまいです。
ちなみに、Cでは実体はスタック・スタティック・ヒープのどれかに作成されます。このあたりのメモリ管理の中身まで意識しなければならない、あるいは操作することができるという意味で、Cは構造化アセンブラと呼ぶことができます。いやあ、K&Rは本当にいい本ですね。もちろん、初心者には全く薦めませんけど。